ボストン日本人研究者交流会 (BJRF)

ボストン在住日本人による、知的交流コミュニティーです。

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2011

第103回 講演会

日時: 2011年12月17日(土) 16:00-18:30
会場: MIT E51-315
「自閉症スペクトラムの世界へようこそ!」
森由美子 氏
Boston Higashi School, Student Support Services/Educational Counselor

自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder)という言葉をお聞きになったことがありますか?今や、自閉症を持つ人の数は、110人に一人とも言われています。自閉症とASDは何が違うのか?ASDの特徴は?支援体制は?ASDの人たちとともに社会で暮らしていくために、私たちが知っておくべきことは?
国籍を問わず、自閉症の児童、生徒が豊かで幸せな人生を送れるように…と、ある日本人女性によってマサチューセッツ州に設立された自閉症教育専門のインターナショナルスクール、ボストン東スクール(Boston Higashi School)。創立25年目を迎える今、児童、生徒数は当初の4倍以上、職員数は7倍以上に増え、日本からの教育方法がアメリカ文化の中で息づき、認められています。
今回は自閉症スペクトラム障害とボストン東スクールについてご紹介させていただき、一人でも多くの方がこの障害に対して理解を深めてくださるきっかけになればと願っております。

第一講演
「小さな機械の小さな物理」
岩瀬英治 氏
Harvard School of Engineering and Applied Sciences (SEAS), Postdoctoral Fellow

「アリは壁を上れるのにゾウが出来ないのはどうして?」「水は少量だと球状の“水玉”になるのに、多量だとそうならず“水溜り”になるのはなぜ?」
皆さんはこれらの疑問に答えられるでしょうか?
近年、小さいものを作る技術は非常に発達し、髪の毛の太さ程度の歯車や構造を作れるようになってきています。これは「マイクロマシン」「MEMS(Micro-electro-mechanical Systems)」と呼ばれ、スマートフォンや自動車にはこの技術を使ったセンサーなどが使われています。しかしながら、このような「小さな機械」を作るときに、大きな機械の設計図をそのまま小さくして作れば動くというわけではありません。これは、最初に挙げた身近な例からも想像できように、小さな機械・小さな世界に特有の物理現象がその前に立ちはだかってくるためです。小さな機械を作るには何を考えたら良いのか、小さな機械はどんな形をしているのか、大きさが変わるだけで世界がどう変わるのかなどについてお話したいと思っています。

第二講演

第102回 講演会

日時: 2011年11月19日(土) 16:00-18:30
会場: MIT E51-315
「心の病を理解するための動物モデル」
大隅典子 氏
東北大学大学院医学系研究科・教授

人間をとりまく様々な病気を克服する上で、動物個体を用いた研究は不可欠である。病因や病態のメカニズムを理解することはもちろんのこと、新たな治療薬や予防手段の開発を、いきなりヒトで行うことはできない。だが、例えば癌や免疫系の疾患と比べた場合、「心の病」の動物モデルを作製することには困難が伴う。ヒトの高度な神経機能のすべてを他の動物を使って理解することには、たとえチンパンジーを用いたとしても限界があるだろう。だが、現代社会においては各種の心の病が増加している。日本における自殺者数は年間3万人を超える年が続き、初等中等教育段階では学習困難児の増加により教育現場の混乱や疲弊が生じている。したがって、精神疾患の予防や治療は重要な課題であり、そのためには何らかの動物モデルを利用せざるを得ない。我々は、遺伝子改変や環境的改変・介入を行うことがもっとも容易なラットやマウスをモデルとして、心の病の生物学的側面を理解し、診断・予防・治療に活かしたいと考えている。

第一講演
「チョコレート・キャピタリズム」
松本洋之 氏
Mitsubishi Corporation, Living Essential Group, Senior Trader, Coffee & Cocoa Unit
MIT Sloan School of Management, Sloan Fellows Class of 2012(MBA Candidate)

皆様、チョコレートはお好きでしょうか?
チョコレートの原料であるカカオ豆は赤道付近の国々、ガーナ、ベネズエラ、エクアドル、インドネシア等約50か国で生産されています。産地によって風味に特徴があり、これをどう活かすかが商品開発の第一歩です。
また、カカオ豆はロンドンとニューヨークに市場を持つ国際先物商品です。
近年、投機ファンドの積極的な関与により、カカオ豆価格は大きく変動するようになりました。また、新興国の経済発展は世界のチョコレート需要を押し上げてきました。国際相場の荒い値動きと需給バランスの変化が、世界のチョコレート産業に大きな影響を与えています。
カカオ豆の生産国の多くは、必ずしも裕福でなく、時に政情不安を抱える複雑なお国事情を包含しています。生産者支援、環境負荷の少ない農業の実践、安心・安全の確保等、様々な課題が近年、益々重要性を増してきています。
グローバルな資本主義への傾倒の中で、サステイナブルな事業に向けてどのような取組が為されているのか。それをチョコレート産業の事例をご紹介しつつ、皆様と考えてみたいと思います。

第二講演

第101回 講演会

日時: 2011年10月22日(土) 16:00-18:30
会場: MIT 56-114
「自由貿易地域(FTA)ネットワークの世界的変遷:理論的アプローチと動学シミュレーションアプローチ」
古沢泰治 氏
Program for U.S.-Japan Relations, Harvard University
Graduate School of Economics, Hitotsubashi University

今日本では、TPP(Trans-Pacific Partnership)に日本が加盟するべきかどうかが議論になっています。TPPは自由貿易地域(FTA)の一種で、日本の加盟が実現すると、FTAの締結で大きく出遅れている日本にとって大きな転機となるでしょう。
現在世界では、489もの経済地域統合(FTAや関税同盟など)が存在します。1990年代から急速にその数を増やしてきたFTAはどこまで進展していくのでしょうか?FTAの世界的ネットワークはどう変遷し、最終的にはどういう形に落ち着くのでしょうか?日本は積極的にその波に乗るべきなのでしょうか?それとも少し距離を置くべきなのでしょうか?
今回は、FTAの世界的ネットワークの進展を、ネットワークゲームの枠組みで分析してきた私の研究を中心にお話しします。特に、動学シミュレーションを用いて、今後のFTAネットワークの変遷を占おうとする研究を紹介します。複雑怪奇な現実の経済現象を、経済学がどう捉え解明しようとしているのか、FTAの変遷を例にその一端をお見せいたします。

第一講演
「燃料電池とエネルギー」
高木裕登 氏
SONY
Visiting Scientist, Harvard School of Engineering and Applied Sciences, Harvard University

“燃料電池”とは何でしょうか。名前くらいは聞いたことある、という方もいらっしゃるのではないかと思います。
燃料電池は当初は水素社会における自動車のパワーソースとして注目を浴び、昨今は高効率分散型コージェネレーションシステムのコアコンポーネントとして再び期待が寄せられています。
一方、太陽光発電、風力発電等に代表される再生可能エネルギーが地球温暖化を促進すると言われる二酸化炭素(CO2)排出削減の切り札として、そして日本では震災後の各原子力発電所の停止により失った電力を賄うための“創電”技術としても大変注目を集めています。再生可能エネルギーの導入は地球温暖化ガス排出低減につながるとともにエネルギー自給率の向上に寄与するため、積極的に促進されて行くと考えられます。日本では全発電量に収める割合は現状1%程度ですが、今後の伸びを期待したいところです。
今回の発表ではクリーンエネルギーの一翼として期待が高まりつつある“燃料電池”の仕組みと魅力、その動向をご説明させていただくとともに、現在の地球環境・エネルギー情勢下での可能性について皆様とお話できれば幸いです。

第二講演

第100回 基調講演会

日時: 2011年10月1日(土) 15:00-16:30
会場: MIT 4-370
「東京の熱血野球少年からボストンのオーボエ奏者に そしてこれからの15年」
若尾圭介 氏
ボストン交響楽団オーボエ奏者
Assistant Principal Oboe, Boston Symphony Orchestra.
Principal Oboe, Boston Pops Orchestra

真摯に思い描く音を生み出そうとするとき、真剣に音楽に集中するとき、自分の中に「言葉」は聞こえてこない。
言葉そのものの意味にこだわることや、人々に分かり易く説明をすること、巧みな表現で思考や成果を披露することに重きをおいてこなかった私がこの度、日本人研究者交流会にて講演させて頂くことになりました。研究者の方々とは全く異なる回路からのアウトプットを探索する音楽家の私がお話することが出来るのは、少々特殊な道のりを経てきたオーボエ半生の山あり谷あり話でしょうか。
インタビューでは必ず聞かれるオーボエを始めたきっかけや恩師との出逢いのエピソード、ボストン響入団したての頃はオーケストラも今より音楽的エリート集団という保守的な色合いが濃く、マエストロ小澤征爾氏が初めて入団を認めた日本人ということもあってリアルな苦労話は語りきれないほどあります。またオーボエを通して多くの世界的な音楽家、人物と出逢い、深く影響を受けてきました。
そんなお話をしながら、来年50歳を迎える正直そのままの私を前に何かを感じたり考えてもらう機会になればと思っています。
人々の前に立つ時に切り離すことの出来ないオーボエは当然持参し、語りの締括りをしたいと考えています。

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第99回 講演会

日時: 2011年5月14日(土) 16:00-18:30
会場: MIT Ray and Maria Stata Center, Room 32-141
「救急医療危機!?今我々に出来ることースケープゴート探しからの脱却ー」
志賀隆 氏
マサチューセッツ総合病院救急部 インストラクター

「20歳妊娠中の女性が陣痛にて救急隊を要請。すぐさま救急車収容されたものの大都心の真ん中で30分以上受け入れ病院を探すことに。理由は彼女が外国人で、かかりつけの産婦人科がないため。受け入れ先で残念ながら死産に。」
日本の新聞では、4コマ漫画で医学部でたらいまわし(正確には応需不能)が教えられているのではないかという風刺があります。しかし、実際医療提供者は患者をたらいまわしているのでしょうか?実際は受け入れたくても受け入れられない色々な事情があるのだろうと思います。
初めの事例は1980年代の米国のものです。当時は支払能力などを主な理由に救急患者を断る救急部がみられました。しかし、記述妊婦のケースや側頭部を刺 された男性が脳外科医に診てもらえず搬送先で死亡などのケースなどから救急患者とお産の患者を断らずに受け入れる連邦法(Emergency Medical Treatment and Active Labor Act:EMTALA)が制定されました。
日米で5年づつ医師として働き、日本の市民・医療提供者の関係をみて私が感じるのは
1) お互いの事情が知られていないことによる不信感
2) その不信感を解決する具体案のないことによる不満
3)時に正確性を欠くセンセーショナルなマスコミによる上記二点の増幅
です。
ヘルスケアリフォームなど国レベルの政策では全く日本の後塵を配している米国ですが学ぶこともあると私は思います。私は今回の機会に皆さんに救急医療を取り巻く環境と問題をご理解いただき、市民、行政、政治、医療提供者それぞれがスケープゴート・犯人探しに終わるのではなく未来に繋がる対策を考えていければと思います。どうぞよろしくお願い致します。

「節税と脱税の違いって? ~「経費で落とす」は魔法のコトバ?~」
緒方憲太郎 氏
公認会計士・税理士・AFP(ファイナンシャルプランナー)
Ernst&Young 新日本有限責任監査法人 シニア 兼 緒方会計事務所 代表

お金って誰でも毎日のように触れているものだと思います。でもその稼ぎ方と使い方だけ考えて生きていませんか?普通に生活している中では意外と解っているようで知らないことも多いと思います。
所得200万円以下の納税者数は全体の38.4%、彼らの税額総額は全体の1.7%。一方500万円を超える納税者数は全体の24.2%、彼らの税額総額は全体の92.4%です。(平成21年度国税局)。概算ですが年収500万円の人ががんばってあと100万円稼ぐとその3割は税金になります。普通だなと感じますか?何とかしたいと思いますか?
今回の講演では簡単な内容にはなりますが、専門でない方々に独特の切り口から分かりやすく、興味のわくよう、楽しい一時間を提供できればと思っております。内容は下記のようなものを散りばめた講演にしようと考えています。
・ 会計と税務の違い
・ 税のしくみ
・ 経費で落とすってよく聞くけど何をしているの?
・ 節税と脱税の違い
・ 副業のススメ
・ 税理士の選び方
この講演では会計や税務の話を気軽に楽しんで漠然と把握したい人向けといえます。内容は日本の会計・税務(特に所得税)に関する内容ですのでアメリカの会計・税務には対応しません。日経新聞をより理解したい方、日本で一旗挙げたい方、日本で副業を考えている方、タイトルに興味を持った方等に満足した時間を提供できるよう精一杯好き勝手話をさせていただくつもりです。

第98回 講演会

日時: 2011月4月16日(土) 16:00-18:30
会場: MIT E51-325
「熱いトウガラシ・つめたいミント:生物にまつわる温度の不思議~温度と生物の関係を研究する温度生物学をめざして~」
稲田仁 (いなだ・ひとし) 氏
Research Associate, Department of Molecular Cellular Biology, Harvard University

「今日は暖かいですね」「冷たいアイスを食べて頭が痛くなった」「どうも熱があるみたいだ。寒気がする」私たちは、快・不快に感じなければ、普段の生活で温度というものに特に目を向けることはありません。温度という刺激はどこでもあるので、普段は忘れられがちなものです。でも、ひとつ不思議なことがあります。熱さや冷たさという温度という刺激は、光やにおい・味といった刺激とは違って、実体がありません。つまり、モノではないのです。では、モノではない温度というものを、私たちはどうやって感じているのでしょう?
最近、私たちがモノではない温度というものをどのように感じているのか、そのメカニズムがある程度わかってきました。じつは、私たちの体は温度という刺激を電気信号に変えて感じているのです。しかし、生き物と温度の関係については、まだまだわかっていない事がたくさんあります。
今回の講演では、生物にまつわる温度の不思議について、広く例を挙げてお話ししたいと思います。トウガラシを食べるとなぜ熱/辛く感じるのか。ミントの清涼感はどこからくるのか。なぜ病気になると熱が上がるのか。このような疑問に対して、いまわかっている事、まだわかっていない事を、簡単に紹介します。

第一講演
「プライベートエクイティ投資ファンドの実態」
末包昌司(すえかねまさし) 氏
ハーバードビジネススクール・Bain Capital

少し前に、日本では「ハゲタカ」というドラマ・映画がはやりました。
ドラマでは主人公鷲津が経営するファンドが日本企業を次々と買収し、その舞台裏に潜む人間模様などがビビッドに描かれています。
しかし、「ファンド」といっても実は様々な種類の「ファンド」があります。倒産寸前の企業を二束三文で買収する、おそらく皆様がイメージする「ハゲタカ」のようなファンドもあれば、アメリカのIT産業・クリーンテック産業を育成したベンチャーキャピタルもファンドの一形態です。それらを一括りにして議論しても、実態はさっぱりわからないままです。
様々なファンドが存在する中で、アメリカ経済に大きなインパクトを与えているファンドの種類の一つが「プライベートエクイティ(PE)」と呼ばれるものです。1980年代にアメリカに登場し、日本においては1990年代後半あたりから存在が大きくなってきました。
ドラマ・映画ではストーリーの面白さに目がいってしまいますが、実際にPEファンドは社会にどのような影響を与えているのか、実際日々どんな仕事をしているのか、余りよく見えてこないのではないでしょうか。このような問題意識を背景に、本講演では、
・そもそもファンドとは何なのか
・ファンドにはどのような種類があり、どのような社会的役割を果たしているのか
・特に、プライベートエクイティ(PE)ファンドとはどのようなことをやっているのか
・PEファンドの世界経済や日本経済への影響は今までどのようなものだったのか
・金融危機を踏まえて、今後のPEファンドの活動はどのように変わるのか
といった論点に対して、私の日米でのPE投資ファンド勤務を踏まえ、できるだけバイアスをかけずに客観的なお話をできればと思っています。

第二講演

第97回 特別講演会 (チャリティ研究者交流会)

日時: 2011年3月19日(土) 16:00-18:30
会場: MIT E51-315
「地震災害について私たちが出来る事」
パネリスト(順不同):
石井裕 氏(Professor/Associate Director、MIT Media Lab)
杉山公俊 氏(航空自衛隊、タフツフレッチャースクール)
鈴木ありさ 氏(放射線科医、BWH)
田嶋公賀 氏(カウンセラー、Habit Opco Inc.)
西川淳也 氏(三井物産株式会社 エネルギー第二本部 環境事業部マネージャー、MIT Sloan)

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「ものづくり革命”〜「ファブラボ」の国際的展開について」
田中浩也 氏
博士(工学) 慶應義塾大学SFC 准教授
MIT客員研究員
FabLabJapan Founder http://fab.sfc.keio.ac.jp/

3次元プリンタや各種カッティングマシンの普及に伴い、「個人によるものづくり」—パーソナル・ファブリケーション—の社会が訪れようとしています。
これは、80年代の「パーソナルコンピュータ」、90年代の「インターネット」に次ぐ、3度目の大きな技術革命です。
また、インターネットが切り開いた「総表現社会」を、「ものづくり文化」と再接続させることで、「総工作社会」とでも呼ぶべき次のフェーズに進化させる契機でもあります。
こうしたパーソナル・ファブリケーションの文化を推進する活動組織が「ファブラボ」です。
MIT Center of Bits and Atomsディレクターのニール・ガーシェンフェルド教授によって提唱されて以来、既に世界15国に40か所以上のファブラボが設置され、国際的なネットワークのもとで実験的ものづくりの研究と実践を行っています。
私は、日本に(そしてアジアに)初のファブラボを立ち上げるべく、サバティカルを利用して1年間MITに滞在しておりました。
今回の講演では、ファブラボの現状と経緯、そして日本での展開普及の構想をお話させていただきたいと思います。

第二講演

第96回 講演会

日時: 2011年2月19日(土) 16:00-18:30
会場: MIT 32-155
「“Practice Makes Perfect” ―小鳥の歌に学ぶ脳のしくみ―」
大久保達夫 氏
Department of Brain and Cognitive Sciences, MIT

脳は私たちの知覚、行動、思考など全ての活動に深くかかわっている重要な器官です。それにも関らず、脳は『人類最後のフロンティア』とも言われるほど未解明の事柄が多く、今後の研究の進展が大いに期待される分野です。
そこで本講演の前半では、脳がいかに私たちの生活と密接に関わっているかを指摘した上で、研究対象としての脳の魅力について語ります。また多くの脳科学者がどのような問題を解こうとしているのか、そしてそれらの問題に対してどのようなアプローチをとろうとしているかを簡単に説明します。
講演の後半では、私が日々研究している小鳥の歌学習を例として取り上げ、最先端の脳研究がどのように行われているかの雰囲気をお伝えします。小鳥の歌は、反復練習によってスキルが獲得されていく過程の代表例であり、そのメカニズムは人の言語学習や運動学習と共通する部分が多いと言われています。講演中は小鳥の歌の録音を聞いてもらいつつ、このような学習が達成されるしくみを皆さんと一緒に考えていければと思います。
今回の講演が、脳に関する理解を深めるためのきっかけとなれば幸いです。専門外の方にも分かりやすく話したいと思いますので、どうぞ奮ってご参加ください。

第一講演
「先生、数学って何のために勉強するんですか?」
小林圭 氏
PhD Candidate, Department of Mathematics, Tufts University

高校教師をしていたころ、よく生徒からこんな言葉を聞きました。
「あぁおれ数学ムリやから。」
「うちも数学きらい。もうテストいいからカラオケ行こ♪」
「やべ、漸化式まじわけわからんし。」
「いや三角関数よりマシやろ。」
「てゆうかでも数学って結局公式覚えれば終わりじゃね?」
「先生、こんなの何かの役に立つんですか?」
みなさんは中学高校で数学の先生から何を教わりましたか?高校で数学を学ぶ目的について、学習指導要領は次のように定めています。『数学における基本的な概念や原理・法則の理解を深め,事象を数学的に考察し処理する能力を高め,数学的活動を通して創造性の基礎を培うとともに,数学的な見方や考え方のよさを認識し,それらを積極的に活用する態度を育てる。』ここにある『数学的な見方や考え方』とはどういったものでしょうか。高校教師としての経験を踏まえ、研究者の視点を織り交ぜながらお話ししたいと思います。数学が好きだった人も嫌いだった人も得意だった人も苦手だった人も、もう一度あの頃に戻って一緒に数学について考えてみませんか。

第二講演

第95回 講演会

日時: 2011月1月15日(土) 16:00-18:30
会場: MIT E51-315
「コンピュテーショナル・オリガミと建築デザイン」
舘知宏 氏
Visiting Scientist, Computer Science and Artificial Intelligence Lab, Massachusetts Institute of Technology
東京大学総合文化研究科助教

いま折紙は日本文化を超えてグローバルな芸術媒体として発展しています。例えば日本折紙学会、OrigamiUSAといった折紙愛好者・研究者のコミュニティが成長しており、折紙作品の表現の幅も大きく広まっています。また折紙は構造工学、数学、計算科学、教育等の多様な研究領域で研究・応用が進んでいる学問分野でもあります。一枚の紙を切らずに折る、という難解な制約をどのように解き、さらにそれをどのように生かすか、というテーマが芸術においても研究においても非常にホットなトピックとなっており、そのなかでコンピュータの果たす役割は非常に大きくなっています。
特に建築デザインの場面においては、一枚の面から三次元形状へと成形する技術、ポータブルに折り畳める展開構造、変形メカニズムなどへ折紙の応用が考えられます。ここでは、折紙に由来する制約条件とデザイン上必要とされる条件の両方を満たしつつ、さらに意匠上の工夫を可能とすることが要求されます。これらのデザイン問題を解くためには、一般化された折紙の幾何学問題とその解法アルゴリズム、すなわちコンピュテーショナル・オリガミの研究が有効です。
本講演では、折紙と折紙学の現在を紹介しつつ、私がこれまでに行ってきたコンピュテーショナル・オリガミの研究や折紙のデザインシステムの開発等についてデモンストレーションを交えつつお話ししたいと思います。

第一講演
「財政・社会保障政策担当者の視点から見た米国のヘルスケア改革」
小川洋平 氏
Master of Arts in Law and Diplomacy, The Fletcher School, Tufts University
財務省

ボストン在住の皆様の中には、オバマ政権成立直後からヘルスケア改革法案が成立した2010年の始めにかけてアメリカ国内を揺るがした「ヘルスケア・ディベート」について、鮮明な記憶をお持ちの方も多いかと思います。
「ユニバーサル・ケア」を掲げ無保険者の解消を目指すオバマ大統領及び民主党のリベラル派と、小さな政府と選択の自由を標榜する「ティーパーティー運動」に代表される保守派との間での激論は、2010年3月の法案成立で一応の決着を見るまでの間、文字通り国論を二分し、今なお法律の執行を巡り議論が続いています。
他方で、日本をはじめとする多くの先進国で当然のこととされる「国民皆保険」の導入が何故これほどの議論を呼ぶのかにつき、不思議に思った方も多かったのではないでしょうか。
今回の発表では、厚生労働省に出向し介護保険制度の改正に携わった経験を持ち、公的社会保障と財政の関係を「国の形」の根幹と考える若手財務官僚が、オバマ政権下のヘルスケア改革を巡る議論の本質と、この問題に透けて見える「この国(アメリカ)の形」と「我が国(日本)の形」の違いについて、大いに熱弁をふるいます。どうぞご期待ください。

第二講演