ボストン日本人研究者交流会 (BJRF)

ボストン在住日本語話者による、知的交流コミュニティーです。

過去の講演

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2020

第185回 講演会(オンライン開催)

日時: 2020年12月19日(土) 16:00-18:20
会場: Zoomによるオンライン開催
「“群”を抜いた美しさを持つ対称性 ― ナノクリスタル自己集合体に見つかった新しい準結晶構造 ―」

永岡 靖貴 氏

Postdoctoral Researcher
Brown University


髪型からTシャツの柄まで、わたしたちは日頃からデザインの規則性と対称性を評価しています。 規則性や対称性は研究の分野でモノの構造を評価する際にも重要で、科学者は群論という規則性や対称性を扱う手段を使い構造を定義してます。 化学で扱う「結晶」の構造も全て群論で定義され、構造がある事即ち群論で定義できること、と考えられてきました。
準結晶はこれまでの規則性と対称性の概念を打ち破る構造として注目を集め2011年のノーベル賞の対象にもなりました。 準結晶のもつ「規則性はないが対称性はある」という群論の枠に収まらない不思議なパターンは黄金比やフラクタルを含み、そのデザインは見るものを魅了します。 今回は新しい準結晶パターンがナノクリスタルの自己集合体の超構造に見つかった2018年の私の論文を軸に「もっとも美しく新しい対称性」に関してお話します。

第一講演
「ベッドサイドとベンチを結べ 腎臓内科医の挑戦」

森 雄太郎 氏

Research Fellow in Medicine
Division of Renal Medicine, Department of Medicine,
Brigham and Women’s Hospital, Harvard Medical School


糖尿病性腎臓病は、糖尿病が引き起こす主要な臓器の障害であり、進行すれば透析や腎臓移植が必要となる末期腎不全に進行してしまう病気です。日本では約30万人、米国では約70万人、世界ではおそらく250万人以上が透析・腎臓移植を受けており、その患者さんたちは日々の通院を中心とした重い負担を背負って生活しています。根本的な治療法が存在しない、つまり治療に限界があることが、この病気の大きな問題点となっています。
患者さんを診療する臨床現場におけるこのようなアンメットニーズをいかに解決するか。今回の講演では、この視点を主軸として、糖尿病性腎臓病とさらにはパンデミックとなったCOVID-19について、私どもが進めてきたベッドサイドとベンチを最速でつなぐ研究のお話をさせていただければと思います。

第二講演

第184回 講演会(オンライン開催)

日時: 2020年11月21日(土) 16:00-18:20
会場: Zoomによるオンライン開催
「増していく光通信とCommunication Skill の重要性」

今野 遼 氏

坪田ラボ
事業開発部長


光通信って何?単なる情報伝達ツールなのか?
当講演では11年間の欧州、米国での営業経験で培いました経験や最新の光通信技術についてお話しさせて頂きます。
光通信、あまりなじみのない言葉かもしれませんが、皆様の生活に密接に関わっています。 もはや欠かせないインフラの一部であり、5G/IoTの普及も相まり、医療機器や車等のConsumer Productへの実装等さらなる普及が見込まれ、またCO2削減にも貢献致します。
光通信の根幹技術でもある光ファイバーは、なんとヒトの髪の毛の1/10の細さなのです。 そこを1秒間で地球を7周できる速さの信号が通ります。今回はそんな光通信の世界、ミクロン、ナノレベルの技術やトレンドについてご紹介致します。
ツールである光通信を活用しつつ、コロナ禍を乗り越えていきましょう!

第一講演
「世界最大の感染症に挑む 〜マラリアの創薬研究〜」

中嶋 舞 氏

Department of Biological Engineering, MIT


毎年2億人以上の感染者と40万人以上の死者を出すこの病気により、アフリカや南アジアを中心に、なんと世界人口の半数が感染の危険にさらされています。 実は日本でも1940年代までは国内発生が多く、あの光源氏も罹ったという設定が物語中にあるほど身近な疾患でした。
マラリアはマラリア原虫という寄生虫を蚊が媒介し、人間では肝臓と血液の細胞で増殖し様々な症状を引き起こします。 治療としては抗マラリア薬を内服しますが、近年、全ての薬が効かない「薬剤耐性マラリア」の出現により、再びその危険性が注目されています。
ところが、新しい薬剤がすぐに必要であるにも関わらず、マラリア原虫は生物として非常に変わった特徴を持つため薬剤開発や研究は長らく困難な状況でした。 これまで私は、MITが得意とするバイオエンジニアリングを用いて、全く新しい手法による抗マラリア薬の開発を試みてきました。同時に、これまで知られていなかった重要なマラリア原虫タンパク質の存在も明らかにしました。 本講演では、実際のデータを基に、急速な発展を遂げるマラリア研究の魅力についてわかりやすくご紹介したいと思います。

第二講演

第183回 講演会(オンライン開催)

日時: 2020年10月17日(土) 16:00-18:20
会場: Zoomによるオンライン開催
「泡と液滴の物理とその応用」

岩田 隆一 氏

Visiting scholar,
Department of Mechanical Engineering,
MIT


泡や液滴は私たちの日常、自然の中で広範に観察され、その美しさや不思議なふるまいから研究者を魅了してきました。みなさまも一度は鍋のなかのお湯が沸く様子や窓ガラスについた液滴をじっと眺めたことがあるのではないでしょうか。一方、工業応用の観点からは、燃料電池や原子炉などのエネルギー変換機器やCPUの冷却装置、また船舶のスクリューの性能や安全性を設計するために、泡や液滴の挙動を理解・制御することが必須となっています。さらに医療分野でも超音波造影や胆石の非接触破砕など泡に関する応用例がみられます。本講演ではこれらの応用事例に泡や液滴がどのように関わっているのかご説明いたします。また、泡や液滴を伴う現象の代表例として沸騰と凝縮を挙げ、それらに関連する私のこれまでの研究や最新の研究話題について、ご紹介いたします。

第一講演
「覆水を盆に返すには 〜吸着材で目指す資源循環〜」

高橋 顕 氏

国立研究開発法人 産業技術総合研究所
材料・化学領域 ナノ材料研究部門
ナノ材料機能設計グループ


皆さんは資源の再利用や循環と聞くと、ペットボトルのリサイクルやレアメタルといった固体の回収を思い浮かべることが多いのではないでしょうか?今回お話するのは排ガス・排水中に存在する低濃度の物質を吸着材により回収することで有効利用する試みです。
通常大気中や水中での物質の濃度は薄まることはありますが濃くなることはありません。一方、吸着材は特定の物質を選択的に集める材料であり、空気や水で薄まってしまった物質を回収し濃縮する機能を持ちます。
排ガス・排水には環境への悪影響与える物質を含むため、現在は時間とお金をかけて処理をしています。これら物質の中には吸着材を用いて回収すれば資源として再利用可能なものが有り、さらに回収することで処理コスト削減も同時に実現することができます。まだ研究開発段階ではありますが、このような吸着材を用いた資源循環のアイディアを紹介したいと思います。

第二講演

第182回 基調講演会

日時: 2020年9月19日(土) 16:00-17:40
会場: Zoomによるオンライン開催
「科学的証拠に基づく政策評価とは」

今井 耕介 氏

Professor of Government and Statistics, Harvard University


近年、「証拠に基づく政策立案(EBPM: evidence-based policy making)」という言葉が日本でも盛んに聞かれるようになりました。 私はこれまで、政治学者そして統計学者として、科学的証拠に基づく政策評価のための統計手法を研究・開発してきました。 本講演では、現在行っている研究から、米国における政策評価の事例を2つご紹介します。 まず最初に、特定の政党・候補者に有利な選挙区割り(ゲリマンダリング)を統計的に見抜く手法についての研究を、次に、刑事裁判で判事が参考にする人工知能(AI)が、人種や性別に関するバイアスを産み出すのかに迫る研究を取り上げます。 講演の最後では、科学的証拠に基づく政策評価を日本においても普及させるには、どのような社会的土壌づくりが必要か、といったテーマを議論したいと思います。

第一講演

第181回 講演会(オンライン開催)

日時: 2020年8月15日(土) 16:00-18:20
会場: Zoomによるオンライン開催
「高分子がつくる未来」

用瀬 英順 氏

Education Division, Human Resources Department, Furukawa Electric Co., Ltd.
Visiting Researcher, Department of Chemical Engineering, MIT


身の回りを見渡すと、PETボトル、ビニール袋や食品容器などプラスチック製品であふれています。 皆さんは他にどんなプラスチック製品を思い浮かべますか? 思った以上に、たくさんあることに気がつくのではないでしょうか。身近すぎて普段はあまり意識が向かないプラスチック、それを構成している高分子に着目したいと思います。
私は企業の開発者、大学の研究者として、両方の視点で高分子を扱ってきました。今日は、それぞれの視点で、高分子について語ります。 前者では、現場における少し泥臭い開発の裏側をお見せし、後者では現場の課題を解決するための高分子ネットワークに関する研究についてお話しします。 最後に、両方の視点から『高分子がつくる未来』について、皆さまと一緒に考えていけたらと思っています。

第一講演
「聴きとろう、宇宙が奏でる旋律を~Listen to the Universe!~」

小森 健太郎 氏

LIGO laboratory, MIT


地球上の全ての音が消えたとき、それでも耳をすましてみると、何かが聞こえてくるのでしょうか? 宇宙から音がやってくる?空気のない宇宙では音が伝わらず何も聞こえない?答えはYes、前者です。実は聴力を極限まで上げると、ある音が定期的に聞こえてくるようになります。 音の正体は重力波、ときには時空のさざなみとも呼ばれる、空間の歪みが伝搬する波動です。空気ではなく空間そのものが振動を伝えるため、宇宙のはるか彼方からでも地球までやってきます。 しかし重力波による空間の歪みは非常に小さく、その観測は困難を極めます。
アインシュタインによる重力波の予言からほぼ100年後の2015年、人類はついに究極の聴力を手に入れ、重力波の観測に成功しました。最初に耳にしたのは、2つのブラックホールが合体したときの音でした。 合体時に放たれた音が10億年の時を経て地球まで届き、重力波望遠鏡という最強の「耳」で聴きとったのです。 この耳はここ数年でさらに感度を上げ、100年間叶わなかった音の聴きとりは、今や週1の日常茶飯事となっています。
本講演では、みなさまに重力波を実際に聴いていただきながら、その面白さを少しでも伝えられればと思っています。

第二講演

第180回 講演会

日時: 2020年2月15日(土) 16:20-18:45
会場: MIT E51-345
「デザインっていったい何? ー 建築家が考える余計なもの」

山本 純子 氏

Principal, iVY Design Associates
Harvard Graduate School of Design


みなさんは建築家というと、日々どんな仕事をしていると想像しますか?「建築をやっている」と聞いても普段どんな仕事をしているのかなかなか想像つかないのではないかと思います。
それではいったい建築デザインとはなんでしょうか?デザインはアートとどこが違うのでしょうか?掘り下げていくと、その根底にあるデザインとは何かという概念の疑問にたどり着きます。アートは表現、デザインは問題解決、と言われたりしますが、わたしにとって建築のデザインとは、問題解決にとどまらない「余計なもの」、つまり感覚的なものを伴う行為や経験を創造することだと考えています。そういった感覚的なものを取り入れたデザインを通してどう社会に貢献していけるかということは常に自問していることでもあります。
建築家の仕事の範囲はどんどん多様化しており、もう「建築」というフレームが当て嵌まらなくなっているのが現状です。例えば、建築とアートの間、建築と不動産の間、建築とテクノロジーの間、建築と教育の間、建築と地域活性化の間、わたしはそういう間に身を置きながらデザインの仕事を行なっています。今回は建築という仕事をなるべくわかりやすく紹介したうえで、建築プロジェクトと軸をずらした「間(あいだ)プロジェクト」の例をいくつかお話ししたいと思います。建築家からみたデザインの可能性をみなさんに共有できたら幸いです。

第一講演
「美味しさをデザインする - 飲料のブランド開発・香味設計 -」

朝見 陽次 氏

MIT Sloan School of Management
サントリーホールディングス


皆さんの日々の生活に欠かせない飲料。スーパーやコンビニで購入する時、原材料や栄養成分をチェックする方もいらっしゃると思います。これらの原材料・成分が私たちの健康に対してどのような影響があるかご存知の方は多いと思いますが、これらが美味しさに対してどのように作用するか考えたことはありますか?砂糖は甘い、クエン酸は酸っぱい、塩化ナトリウムはしょっぱい、カフェインは苦いとそれぞれ単品で感じられますが、これらをどう組み合わせると皆さんが感じる「美味しい」ができるのでしょう?他にどのような要素が「美味しい」に関与するのでしょう?
本講演では、一般的な清涼飲料のブランド開発・香味設計の流れ、シュガーフリー飲料の香味設計、日本と海外における嗜好・商品設計の違いといったトピックを通じて、美味しさのデザインについてご紹介したいと思います。

第二講演

第179回 講演会

日時: 2020年1月18日(土) 16:20-18:45
会場: MIT E51-345
「再生医療のこれまでとこれから ~培地開発事業の経験から~」

松本 拓也 氏

Department of Medicine, Nephrology Division at Massachusetts General Hospital
Wyss Institute for Biologically Inspired Engineering
Regenerative Medicine & Cell Therapy Group, Ajinomoto Co. Inc.


再生医療は夢の治療技術です。「盲目の人が初めて美しい景色を見る」「歩けなかった人が親しい人に駆け寄る」―再生医療がもたらすこのような未来の可能性についてメディアでご覧になったことのある方も多いのではないでしょうか。
再生医療は動作不良に陥った細胞、組織を新しいものに置き換えるものです。そのため、移植する細胞をどのように調達してくるかが産業化への大きな問題でした。2012年にノーベル賞を受賞した山中先生がiPS細胞を開発したことでその問題がクリアされたと考えられたことから世界的な流れとして再生医療への投資が行われてきました。その中で実用化に資する成果が少しずつ現れてきています。私は再生医療周辺事業に従事し、臨床用培地を開発することでその一部に貢献してきました。本発表では培地開発事業及びボストンにおける研究活動を通じて経験したことをご紹介したいと思います。

第一講演
「レアメタル その魅力と資源リスク ~なぜ『レア』なのか?~」

八木 良平 氏

マサチューセッツ工科大学 博士研究員


資源問題や外交問題と関連してよく話題になるレアメタル、実は和製英語であり、英語圏ではMinor Metalと呼ばれます。この、レアポケモン的な名前の印象から、レアメタルを「身近に存在しない、存在 (埋蔵) 量の少ない金属」と認識されている方も多いのではないでしょうか。しかし、スマートフォンやハイブリッド自動車、精密医療機器などのハイテク製品には様々なレアメタルが使用されており、レアメタルは意外なほど私たちの身の回りを囲んでいます。また、レアメタルの中には、皆さんが普段よく見かける銅よりも存在量が多い金属も含まれており、資源の存在量だけでレアメタルと分類される訳ではありません。
本講演では、なぜレアメタルの供給量が制限され『レア』となってしまうのか、そのボトルネックを解説するとともに、最新のレアメタルの製造・リサイクル技術やレアメタル生産に伴う環境破壊問題、さらに、レアメタル資源を全量輸入する日本が今後世界で勝ち抜くための戦略についても解説します。

第二講演