ボストン日本人研究者交流会 (BJRF)

ボストン在住日本語話者による、知的交流コミュニティーです。

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2023

第206回 講演会

日時: 2023年4月15日(土) 16:30-18:30
会場: MIT E52-164
「ウニから紐解く生命の始まり」

江村 菜津子 氏

Brown University MCB Department

(Molecular Biology, Cell Biology, and Biochemistry)


私たちヒトを含む全ての生物は受精卵と呼ばれるたった1つの細胞から始まります。その後、受精卵は様々な成長(発生)過程を経て、ヒトの場合、約38週間で完全な一個体として誕生します。一見、当たり前に感じるかもしれませんが、たった一つの細胞が最終的に複雑な構造を持つ生物に成長することは、とても神秘的で不思議な現象です。これまで多くの科学者がこの現象に魅了され、様々な動物、様々な視点で発生学における研究をしてきました。私も魅了された一人であり、現在はウニやヒトデといった棘皮動物の受精卵を用いて研究をしています。ウニは発生学を代表するモデル生物であり、長年にわたり研究に使用されてきました。本講演では、私の以前の研究対象であるブタなどと比較しつつ、主になぜウニを使って研究するのかに焦点を当てて説明を行っていく予定です。今回の講演を通して、生物が誕生する不思議や発生学の面白さを感じていただけると幸いです。

第一講演
「人の「つながり」から都市を科学する」

矢部 貴大 氏

MIT, Institute for Data, Systems, and Society (IDSS) & Media LAB


新型コロナ流行時には、「今日の新宿の人出は平時から60%減です」といったようなニュースをほぼ毎日耳にされたのではないでしょうか。近年、携帯電話等から取得される大規模な人間行動データの活用は、感染症拡大のモデリングから災害時の復興のモニタリングまで、都市の動的な観測を必要とする様々な場面で活用されるようになりました。私はこれまで、行動データ解析を使って、様々な外的なショックに対する都市のレジリエンスを研究してきました。本講演では、私の最近の研究成果をもとに、ポストコロナ期における社会ネットワークの変化について紹介します。具体的には、新型コロナが人々の行動様式をどのように変え、それによって人々のネットワークがどのように形と質を変えたか、さらには定着した行動変化が地域経済にどのような影響を与えるかについて議論します。

第二講演

第205回 講演会

日時: 2023年3月18日(土) 16:30-18:30
会場: MIT E51-325
「妊娠を目指すカップルと食事の関連について」

三ッ浪 真紀子 氏

ハーバード公衆衛生大学院 栄養疫学部門


食事や運動習慣が糖尿病、心血管疾患などいわゆる“生活習慣病”と関連することは広く認知されていますが、実はがんの発症や妊娠とも関連していることはご存じですか?妊娠といっても女性パートナーだけでなく、男性パートナーのライフスタイルもとても大事です。妊娠したいカップル、妊娠中に病気になってしまった妊婦さんの産婦人科医としての診療経験から、健康な食事とは何か、妊娠したいカップルが準備できることはあるのかをメインテーマにハーバード公衆衛生大学院栄養疫学部門でコホートデータを用いて研究をしています。今回の講演では、私の研究をご紹介しつつ、妊娠と食事の関連、プレコンセプションケアについてお話します。健康な生活習慣を持つことは妊娠だけでなく、その後の人生にも大切になってきますので、今回の講演が皆様のライフスタイルを振り返るきっかけになれば幸いです。

第一講演
「政治(学)におけるデータの活用」

佐々木 智也 氏

MIT, Department of Political Science


ビッグデータやAIといった単語が広く知れ渡るようになってきましたが、政治や政治学においてもデータの活用が広範に及んでいます。特にアメリカでは、世論調査や選挙結果といった基礎的なものだけでなく、有権者の投票の有無や企業の献金額など、政府や企業が管理する多様なデータが分析に使われるようになり、政治学の研究や政治家の行動に多大な影響を与えてきました。他方で、データを盲目的に活用するわけではなく、データが生成・収集される過程を考慮した分析手法の開発はもちろん、こうしたデータを用いた分析がもたらす弊害や倫理的課題にも焦点が当たり始めています。本講演では政治の分野におけるデータの活用とその課題の現状について、最新の知見や私自身の研究、日米比較などを交えて概観します。

第二講演

第204回 講演会

日時: 2023年1月21日(土) 16:30-18:30
会場: MIT E51-325
「化学は21世紀のゲームチェンジャーになり得るか 「ゲル研究」を題材に」

小野田 実真 氏

Director of Polymer Development, Pure Lithium Co.


1900年代初頭、化学は世界の発展の中心にいました。しかし同時に、その発展は世界に深刻な環境問題ももたらしました。そして現在。コンピューターサイエンスが世界を一変させつつある昨今、化学は世界にどのように貢献できるのでしょうか。私はこれまで高分子・超分子ゲルを題材にアカデミアで10年ほど研究し、2社のスタートアップの創業にも携わってきました。本講演ではこれまでのゲル研究を振り返りながらその可能性を提案します。 ところで私は、これまでの研究生活で押しつぶされそうなほど苦しい数年間を過ごしたことがあるのもまた事実です。一時の成功に誤解した私が、研究の本質を見失ったことがその一因です。挫折にまみれた私の研究生活も振り返ることで、本講演が悩める若手研究者の背中を押す一因になれれば幸いです。

第一講演
「テクノロジーで実現するサスティナブルな社会」

大塚 泰子 氏

IBM Corporation, IBM Consulting, Enterprise Strategy Team


この数年、「サスティナビリティ」は非常に重要なテーマになっています。COP(気候変動枠組条約の加盟国が地球温暖化に対する具体的政策を定期的に議論する会合)で全世界レベルで討議がなされ、国連でもメインイシューになっています。民間企業でも、サスティナビリティを踏まえた経営がなされていなければ、投資家や消費者から選ばれない時代になっています。実際、IBMが40か国のCEO約3,000人に実施した調査でも「今後2、3年で企業にとって最も大きな課題と思われるものは?」という質問に対して、世界の51%のCEOが「サスティナビリティ」と回答しており、第1位の課題となっています。本講演では、サスティナビリティがなぜ今重視されているのか、グローバルでの課題や検討内容はどうなっているのか、民間企業の動向や取組みはどのようなものがあるのか、といったマクロ的な視点に加え、サスティナブルな社会の実現に向けたIBMのテクノロジーや研究開発をご紹介します。

第二講演